September 2011

September 11 Sunday 2011

伝統論理学の数学的構造

いろいろやってきたことを整理する過程でちょっと『思想の中の数学的構造』を読んでいたところ「?」となった部分がありました。

つぎに伝統論理学における群構造をしらべよう。(略)以上8個の命題の相互間の変換操作(なにも動かさないという場合、つまり単位元をも含めて)は位数8の群をつくる。しかもこの群は位数4の巡回群1個とクラインの四元群2個を部分群としてもつものである。(pp.96-97)

下線は引用者が付けました。それと文末を句点に変えています。

引用部分で使われている用語を簡単に説明しますと、まず「群」というのは数学の「群論」で扱う「群(group)」です。「単位元(identity element)」は群の構成要素である「元(element)」のうち他の元と演算しても相手をそのままにしておくような特殊な元のことです。群に含まれる元の数は「位数(order)」といいます。

群の種類としては「巡回群(cyclic group)」「クラインの四元群(Klein four-group)」「部分群(subgroup)」の三つに言及があります。

「巡回群」はすべての元がひとつの元の累乗になっているような群のことです。たとえば演算を乗法とするとき「1の4乗根(xの4乗が1であるときの解)」は巡回群(1, i, -1, -i)だと考えられます。iは2乗すると-1、3乗すると-iになり、4乗すると1です。

ちなみにiと-iは互いの「逆元(inverse element)」です。逆元とは、ある元との演算結果が単位元になる元です。1と-1は2乗すると1(この場合の単位元)になるので自身が逆元でもあります。群を構成する元は必ず逆元を持たなければなりません。また元同士の演算結果は群に含まれる元のいずれかでなくてはなりません。この他には「結合法則が成り立つこと」という決まりもあります。

上であげた例、位数4の巡回群(1, i, -1, -i)は「部分群」として(1, -1)を持ちます。単位元は1で、二つの元はどちらも自身が逆元を兼ねています。またこの群の元はすべて-1の累乗で表せますので位数2の巡回群でもあります。部分群の位数は必ず親群の位数の約数です。

あと「クラインの四元群」はこの本の内容について考える際にもっとも重要なものですが、wikipediaには以下のように書いてあります。

>> Klein four-group

Klein four-group (or just Klein group or Vierergruppe (English: four-group), often symbolized by the letter V) is the group Z2 × Z2, the direct product of two copies of the cyclic group of order 2.(略)The Klein four-group is the smallest non-cyclic group. The only other group with four elements, up to isomorphism, is Z4, the cyclic group of order four (see also the list of small groups).

2つの巡回群からつくり出される群で、最小の非巡回群だといっています。引用した際に「Z2」や「Z4」となってしまっていますが、これらは右下に小さく数字が書いてあるもので、数字は位数を表しアルファベットのZは巡回群であることを表しています。他に位数が4であるような群は位数4の巡回群くらいしか無いというようなことが書かれているみたいです(←!)。

あとは...引用部分に「変換」という語もでていましたが、これは群論でいう「変換(transform)」のことではなく普通の日常語の意味だと思われます。私自身もこの文章中で「変換」という語を使いますが、これもすべて日常語としての意味です。一応念のためお断りしておきます。

さて話を戻します。

略した部分には S-P (「SならばPなり」)を原命題とする8つの命題の記号表記と日本名(ex.「原命題の換質」)&英語名(ex.「obverse」)が列挙されていました。伝統論理学については命題列挙部分をのぞくと文庫本で7行にしかならない短い記述だけしかなく、示唆された群については具体的な説明も図示もありません。そういうこともあって初見では下線部で示唆されている内容がよく呑み込めず「?」となったのです。

私が最初にこの記述を読んで思い付いたのは「S/非S」と「P/非P」及びそれらの「前後関係」を表す位数2の巡回群3個からつくり出した群であれば「8個の命題」の構造は表せるのではないか、というもので、それは著者の山下正男先生が位数2の巡回群2個を使って作られる「クラインの四元群」の構造を色々なケースに当てはめ可能であると繰り返し主張していた(上記引用部分もこうした事例列挙の中の一部です)ことからの類推でもありました。「クラインの四元群」の何らかの延長または拡張で対処可能と考えたのです。

この本の中で「クラインの四元群」は多くの場合「長方形」として図示されていました。各頂点に4つの元を配置し、各元の相互変換作用を両端に矢印のついた各辺(対角線を含む)で表すのです。例えば以下のような感じです。

青い矢印が「裏(reverse)」を表し、赤いのが「逆(converse)」に対応しています。対角線の紫の線は両者の積で「対偶(contraposition)」にあたります。

ところで山下先生はあまりこだわってはいないようでしたが、上図が「クラインの四元群」であると考えるとき、その群の構成には2種類(もっとあるかもしれません)の考え方があると思います。

それは「命題を元とする場合」と「変換を元とする場合」の二つです。

前者とすると使用する演算をどう考えれば良いのか(少なくとも私には)よくわかりません。後者の考え方ですと群は(単位元, 裏, 逆, 対偶)の四つで構成され、演算は元を連続して行なうことです。

たとえば「裏」に続けて「逆」を行なうことが両者の演算で、その結果は「対偶」になります。この群の各元は2乗する(こうした演算は乗法と考えます)と、つまり二回連続で行なうと、何も変換しなかったのと同じ結果になるなど先述した群の4つの資格を満たしています。こちらの方が「構造」を考える上では好ましいのではないかと私は思っています。

また話を戻します。

変換が縦横2方向に行なわれる平面で表現された「構造」に対して位数2の巡回群を1つ付け加えて図示するなら高さ方向であろうと考えました。位数2の巡回群1つのときは線分(1次元)として、2つのときは平面(2次元)として表せたので3つのときは立体(3次元)かな?という類推です。いずれにせよ直方体には8つの頂点がありますから、それらに「8個の命題」を配置すれば群構造を使って関係性の記述はできそうです。

「変換を元とする」考え方ですと直方体的なるものは(単位元、前後、左右、天地、前後左右、前後天地、左右天地、前後左右天地)という群構造だとみなせます。これは(単位元、前後)と(単位元、左右)という「クラインの四元群」をつくり出した位数2の巡回群に、同様の群(単位元、天地)を新たに加えたものです。

前述した図の場合と比較すると矢印の位置的には「前後=裏」「左右=逆」「前後左右=対偶」です。演算結果はすべてその群に含まれる元でなければならないので、いくつか元が増えて最終的に位数8の群になりました。なお「矢印の位置的には」と断りを入れたのは直方体の各辺(と対角線)にどのような意味を持たせるか、つまり「構造」の各部分がどのような意味を持ち何に対応するかという話はここではしていないからです。

さて、ここまで山下先生が示唆した群について考察してきましたが、上記の構造を持つ群の部分群が「位数4の巡回群」であることはあり得ません。各元はすべて自身が逆元を兼ねているため、この元の部分群は(親群の位数8から単位元の分1を引いた)7個の「位数2の巡回群」か、それら巡回群が組み合わさった同数(図形的には1つの頂点を共有する6つの長方形と1つの四面体で計7個)の「クラインの四元群」になってしまいます。部分群となる「クラインの四元群」について山下先生は「2個」だと示唆していましたので、それとも大きく異なります。

何か全く別の方法や考え方を用いなければいけません。

これについては「位数4の巡回群」がそもそもどういう条件下で出現するのか、というあたりが突破口だろうとは考えました。ですが、非常に残念なことに私が持っている群論の知識はほぼ『ガロアと群論』がすべてなのです。それさえも怪しいのですが...。

しかし、ググっていたらなんとか「正解」とおぼしきものには到達できました。「dihedral group」というもののようです。

>> Dih4

>>

確かに「位数が8」「位数4の巡回群を部分群として1個持つ」「『クラインの四元群』を部分群として2個持つ」という特徴をすべて満たしています。おそらくこれのことを言っていたと考えて間違いないでしょう。

あとはこの dihedral群(略してDih群)の元をどう特定していくか、です。それが出来なくては理解できたことになりません。

親族の基本構造

私は先に「変換を元として考えたい」旨述べました。それは唯一のネタモトである『ガロアと群論』が主に「置換群(substitution group)(通常「置換群」は permutation group といいますが、『ガロアと群論』巻末の「重要な術語」リストには substitution group と書いてありました。著者の Lieber が何か意図をもってこう書いていたのかもしれません。単なる翻訳者の間違いという可能性もなくはないですが:汗)」についてのものだったからでもあります。もちろん個人的な好みもあるのですが。

「置換群」というのは変換を元とする群で、その変換が置換であるものです。「1」「2」という数字の並びを入れ替える(つまり置換する)操作を(12)と書きます。「1」「2」「3」という3つの数字の場合に 123 → 231 → 312 → 123...という置換を繰り返す操作を(123)と書いて、これを元とします。123 → 213 → 123... なら(12)(3)又は(12)です。単位元は英語名の頭文字をとって I と表記します。

「クラインの四元群」をこの表記法を使った置換群としてV1={ I, (12)(34), (13)(24), (14)(23) }と表せます。山下先生方式で図示すると以下のようになります。

pとその否定の二つの状態を「12」「21」と考え、同様にqに対しては「34」と「43」を適用すると、先述した「クラインの四元群」の図とすっかり同じになります。構造も、それが意味することも同じだということです。

しかし「クラインの四元群」はV2={ I, (12), (34), (12)(34) }等々と色々に書けます。図は以下のようになります。

構造としては同じなのですが、V1と同じ方式(意味を持つ数字の最小単位を2桁にする)では「裏、逆、対偶」を表現した図と表す意味が異なってしまいます。ですが、これについては単に4つの4桁の数字をまるごと4つの命題と1対1対応させてしまえば結局同じことが表現できます。

一方、V1とV2で使い勝手に大きな差が出る場合もあります。それはたとえば『親族の基本構造』に出て来る婚姻規則に適用するときなどです。山下先生の群に関する論もこれへの言及から始まっていました。

>> カリエラ型の婚姻規則とクラインの四元群(橋爪大三郎『はじめての構造主義』への部分的批判)

ググってみると上記のサイトがヒットしました。タイトルにある「カリエラ型」というのはオーストラリアの未開族である Kariera 族のことです。彼等が一見すると非常に複雑怪奇な婚姻規則を持っているようだったが、アンドレ・ヴェイユとレヴィ=ストロースはその規則を「クラインの四元群」を使って解明したという構造主義の輝かしい成果があるのです。

彼等の社会には4つのセクションがあって、全員がいずれかのセクションに属しています。そして各セクションの所属者たちは結婚に際してどのセクションから相手を選ぶか、またその結婚によって生まれた子どもがどのセクションに属するかについて複雑に見える取り決めを持っています。

はじめての構造主義』の解説では非常に情報が整理されておらず、また婚姻規則を「クラインの四元群」で書いたという図も各頂点に何か書いてあって4辺と対角線を使ってそこから何かを読み取る、という点ではこれまで例示してきた図と同じようなものに見えるのですが、実は全然性質が違っていて群とは何も関係ないんじゃないかと思えてなりません。

左上にA1、右上にB1、左下にA2、右下にB2と書いてあって4つのセクション(ここではクラスと呼んでいます)を表していて、横方向が「父のクラス/子のクラス(の変換?)」、縦方向が「母のクラス/子のクラス(の変換?)」だそうです。この図から「父親が A1 で 母親が B2 なら子どもは B1 だとわかる!」そうなんですが、なぜ「A2」じゃいけないのか全然わかりません。それとそんなことが図から「わかる」ということが一体どう「群」と関係するのか見当もつきません。

しかしこれらの怪しい部分に目を瞑っても「対角線が結婚可能かどうかを示す」という説明については、手の施し用がないのではないでしょうか。どうにも理解を越えています。これは「変換操作」ですか?

一方『思想の中の数学的構造』では4つのセクションそのものを扱うのではなく、彼等の結婚の型を対象として解説しています。私はここになんらかの工夫があったんじゃないかと思っています。『親族の基本構造』を読んでないので確定的なことは言えませんが「ここでは彼等の主張を再構成して述べてみよう(p.61)」とありましたからその可能性は高そうです(しかし『はじめての構造主義』の初出が1988年なのに対して山下先生の論は1969年なんですよね...なぜ理解が後退したのかしらん?)。

カリエラ族のルールを「結婚型」で捉え直す山下先生の解説に準拠しつつ、それを更に「置換群」を使って再構成すると以下のように考えられます。セクションは A1 A2 B1 B2 ではなく単純に A B C D という表記です。

まずM1はAB(夫がAに所属、妻がBに所属)の結婚で子どもはDに所属します。以下M2がCDで子はB、M3がDCで子はA、M4がBAで子がCです。

M1の次世代が男子だった場合にはその子はM3タイプの結婚をします。一方女子だった場合にはM2タイプの結婚をしなくてはいけません。つまり「 M1 → M3 (男の子」)と 「M1 → M2(女の子)」 の2系統の変換があるわけです。同様に「 M2 → M4(男) 」 「M2 → M1(女) 」「M3 → M1(男)」「M3 → M4(女)」「M4 → M2(男)」「M4 → M3(女)」です。

以上のことからM1M2M3M4という親世代に対して息子達の結婚タイプはM3M4M1M2となります。1234から3412という変化です。この3412は男の孫たちの世代では1234に戻ってしまいます。V1における赤い線(13)(24)の置換そのものです。同様に娘達に関しては 1234 → 2143 → 1234 です。これもV1における青い線(12)(34)の置換と同じです。参考にしやすいように図を再掲します。

これと対比される部族としてタラウ(Tarau)族というのもいるそうです。彼等の婚姻規則は結婚タイプについてはカリエラ族と同じで、子どもの所属するセクションが父親と同じという点でだけ異なります。細かい説明をはぶいて言いますと彼等は1234 → 4123 → 3412 → 2341 → 1234...という4つの状態が巡回していく変化をします。つまり位数4の巡回群を作るのです。

これを置換群としてみると G={I, (1432), (13)(24), (1234)}になります。このとき(1432)と(1234)は逆元で、(1432)を累乗していった場合も、(1234)を累乗していった場合も共にすべての元を表せます。

上でリンクした『はじめての構造主義』批判をしている人は、群論でこうした構造を説明することに冷笑的なようです。ちょっとおしゃれに知的に見えるだけで何の意味もないというようなことを書いていました。最後にお勧めとして『寝ながら学べる構造主義』をあげるあたり、相当人文科学をバカにしているのかな?という印象です。(余談:しかしコノヒトは「群」の条件を3つだと書いたり、「結合法則」の説明で「交換法則」のことを言ったりしているので所謂「天然」なのかもしれません。「クラインの四元群」は「可換群」という特殊な群ですので交換法則も成り立ってはいるのですけど)

ただ、こうした意見には首肯せざるを得ない部分もあります。たとえば私が最初に示した4つの命題の図は高校1年生用の基礎レベル参考書にそっくり同じものが載っています。それは高校数学教育のレベルが異常に高いということは意味しないでしょう。逆に群論がもはや時代遅れのポンコツ理論だということでもありません。

一応乗りかかった船といいますか、折角ここまで言及してきたので「効用」について指摘しておきます。『はじめての構造主義』での説明もなんだか誤摩化されたような感じでしたし、山下先生のこの本でもいまひとつわかりにくかった「交叉イトコと平行イトコに関する問題」について以下にちょっとまとめてみます。

「クラインの四元群」が今までと違うかたちになっています。先に言及した Dih4群の部分群である「クラインの四元群(別名Dih2)」はこの形で表現されていました。ついでですので以後「クラインの四元群」のことは Dih2群と呼ぶことにします。

上の図に関しては見てそのままですが、カリエラ族では両側交叉イトコ婚が可能なのに対してタラウ族では片側しか可能ではないことがわかります。どちらも例としてM1夫婦から孫の代までの結婚を示しました。カリエラでは息子達はM3の結婚をせねばならず、娘達はM2ですので型があわないためキョウダイで結婚はできません。タラウ族でも息子達は親と同じM1で娘達はM4ですからキョウダイ婚は無理です。

孫の代ではどちらの族も「息子の息子」と「息子の娘」は型が合いません。「娘の息子」と「娘の娘」も同様です。つまり平行イトコ婚はできません。カリエラ族では「息子の息子」と「娘の娘」、「息子の娘」と「娘の息子」はそれぞれ型が同じなので結婚できます。故に両側交叉イトコ婚が許されます。

一方タラウ族では「息子の娘」と「娘の息子」は型が合いますが、「息子の息子」はM1で「娘の娘」はM3なので駄目です。故に片側交叉イトコ婚のみが許されます。

これは『はじめての構造主義』でも言及されていたことですが、両部族の婚姻規則の構造を知ることで、そしてそれのみで、それに付随し関連する別の問題についても理解が可能になったことがこの方法のすばらしいところなんじゃないかと思います。

とはいうものの、疑問点は残ります。この構造からはタラウ族では(息子と父親の型が同じなので)母子の近親婚が可能であるように見えます。この部族ではそのあたりのことはどうなっているんでしょうか。また、ここでは変換を世代の変遷と意味付けているせいで Dih2群の 1234 → 4321方面の置換が他の置換と大きく違う意味(2世代分という意味)をもってしまっています。これは数学的に規定される群の性質等とは違った解釈なのではないかと思えます。もしかしたらそういう「困った点」を糊塗する必要もあって山下先生は執拗に長方形タイプの図示を行なっていたのかもしれません。

特定した群について

長々書いてきてすっかり疲弊したので、ここらで「伝統論理学の8命題」に関する山下予測(←?)に合致する置換群を示しておきます。これしかないのかどうかはよくわかりません。

Dih4={I, (12), (34), (12)(34), (13)(24), (14)(23), (4132), (1423)}

Z4={I, (4132), (12)(34), (1423)}

V1={I, (12)(34), (13)(24), (14)(23)}

V2={I, (12), (34), (12)(34)}

Dih2群に関してはここまでで散々見慣れた奴ですね。位数8のDih4群の元と、ついでに他の三つの部分群の元も(4132)をa、(12)をbにして書き換えてみます。

分かり易さを考えて蛇足ですがaの4乗とbの2乗が単位元になることを示しておきました。こうなってくると何やら神秘というか納得できない気持ち悪さみたいなものさえ感じます。たぶん数学的感覚にすぐれている人は(本物の)絶対音感がある人が音に対してそうであるように、こういう関係性も一発で見えたりするんでしょうね。だから若くして才能を発揮出来ない人間には見込みがないと言われる世界なんでしょう。

雑感

Dih4群の図式に伝統論理学の8命題を当てはめた画像を作ろうかと思いましたが、すっかり興味をなくしてしまったのでやめました。Dih4群の(数学オンチからみて)不可思議な性質にすっかりヤラレてしまった感じです。「構造」そのものの方がよっぽど興味深いですね。

「構造主義」が駄目になってしまったのは、よく言われるように最初は「数学的構造」を使っていたのが、後にどんどんなんでもアリのわけがわからない似非理論でもオーケーになってしまったからだ、というのはたぶん本当なんだろうと思います。粗悪品だらけで信用を失ったんですね。

とはいうものの厳密に取り扱った場合に「数学的構造」が現実世界にある何かを正確に反映するようなことも期待できないでしょう。自然界に存在する結晶などの単純な物質や人間と関係しない物理現象でさえそうであるのに、社会や文化に関することに対してうまく適用できるはずがありません。こういう事態に陥ったことにも必然性はあったのでしょう。

ですが私は、「数学的構造」とは似て非なる「統計的構造(?)」を使った別種の「構造主義」には復権の機会はあると思っています。また「完全に説明しつくす」といったことを目論むのではなく、「いくらか見通しがよくなればよい」くらいの感じで「構造」を利用すれば(つまり志を低くして、そのかわり成功事例を多数積み上げれば)地味ながら有用という評価も得られそうです。

なかなかそう上手くはいかないんでしょうけどね。

以下参考になった wikiepdia のページなどをリンクしておきます。『ガロアと群論』を読んでいるときにも相当苦戦しましたが、日本語の数学用語は英語のそれより分かりにくく、また単語レベルではなく文法のレベルでも相当奇怪な表現が多用されていて理解の妨げになります。「元」という用語ひとつを例にとってもそうですが「element」と言われた方が格段にわかりやすいんですよね。それと数学的な概念として難しいのか、翻訳者がちゃんと理解していなくてなんだかおかしな説明になっているのか日本語で読むと判断がつかないこともあるのでリンク先は英語版の wikipedia です。

>> Cycle graph (group)

>> List of small groups

>> Examples of groups

>> Direct product of groups

>> Group (mathematics)

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